原作を読んで映画を見る「ミセス・ハリス、パリに行く」
2022年 11月 21日
土曜日の夜、目が覚めて少し読み、日曜日の朝1時間半ほどで読み終えた。
ミセス・ハリスは掃除婦をしながら生活している貧しい未亡人でありながら、天性の明るさを備えている。ある日掃除に行っている家のドレッサーの中にあったディオールのイブニングドレスに魅了される。
そしてディオールの自分のドレスを手に入れることが夢となった。節約をしながらお金を貯めて、とうとうパリへディオールのオートクチュールを買いに行く。
コメディかと思われるほどの明るさのなかにシニカルな人間の機微が表現されているが、
さらにドタバタといろいろ解決してゆくシンプルな結末は、ほんのひと時の心の平和をもたらしてくれる。
今上映中の「ミセス・ハリス、パリに行く」の原作である。
心模様は本から伝わってくるが急にディオールの洋服と、1958年、この小説が書かれた当時のロンドンとパリの風景が見たくなった。
それには映像しかない。
午後近所の映画館に出かけた。
当時のディオールの洋服は可愛らしくもあり、懐かしい雰囲気が漂っている。
オートクチュールの世界を覗くこともできる。
これまで縁があったディオールといえば、「ミスディオール」と「ディオリッシモ」という香水のみだ。1970年代、この香水の香りが日常と違う世界にほんの少しだけ誘ってくれたような気がした。
原作を読んで映画を見るとがっかりするという覚悟をしながら、それでもなるほど原作をこのように変えて映画化するのだという面白さはあった。
しかし一番魅了されたのは原作の中でミセス・パリスが何軒もの家をてきぱきと片づけてゆく様子で、その日々の生き方だったようにも思える。
自分の状況に負けずに立ち向かう人を尊敬している。そしてそうなりたいと思う。
当然覚悟していた通り原作の方が二倍面白かったのだが、その面白さに映像が肉付けしてくれて、
良い休日になった。