「カラマーゾフの兄弟」 ドストエフスキー著
2021年 03月 07日
とうとうドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を読み終えました。
光文社古典新訳文庫で、 亀山郁夫氏の訳本が出版された時、この本はある意味ではひと時代ブームになり、光文社古典新訳文庫を文庫の中一角を担う位置づけに大きな役割を果たしていたのです。厚い文庫本で5巻もあるのに多くの人がこの本を読みこなしたという事実が私を圧倒していたせいで、今まで手がつかなかったのです。
「親殺し」というテーマを中心に、神の存在を考え、人間の原罪をみつめ、集団と個の心理、ある時は率直であり、ある時は詐欺師的である人間の心理をえぐり、人間を何重にも重ねてみる面白さは、読者の心理までも、小説に引き込んでしますのです。
作者は人間の精神が何重構造にもなっていることを計算しつくして描いています。それゆえそれぞれの人生を語りながら進むこの作品のどの部分も読み飛ばすことが出来ません。
なによりも登場人物の性格付けの巧みさは、その一人ひとりが短編小説の主人公であり、精工に織られたペルシャ絨毯のようでもあり、その作品を読み終えた今、畏敬の念を持ちながら佇むしかないのです。
亀山氏は後づけで「はじめはじっくりと、後半にかけて興味が先へ、先へと読者の興味をひっぱることを留意して翻訳をした」というようまな内容を披露しています。
翻訳でそんなことが可能なのだろうかといぶかりながら、すっかりと翻訳者の意図通りにはまってしまいました。
「カマラーゾフの兄弟」は未完であり、三男のアレクセイがこの後の物語の主人公となるべく、さまざまな布石が打たれていますが、残念なことにここまで出版したあとに、作者が病死します。
未完の小説の最後はこのアレクセイが仲間を失った子供たちにかたります。
「自分はこれからこの土地を離れることになる。亡くなった友達を忘れないこと。みんながここで味わったことを忘れないこと。人間は良い時間をもったことを忘れなければ、苦しい時も乗り越えられます」と。
この場面は交響曲最終章、例えばベートーベンの第九の最終章「歓喜のうた」のように、読者は今生きていることに感動を呼び覚ますのです。ああ、読んでよかったと。
この10年でわたしにとっては、一番良い読書時間となりました。
だから語りたいことがたくさんあるのですが、今はどこから手をつけてよいかわからないのです。
さらに、「罪と罰」を読み終えた時に味わったと同じドストエフスキーロスなのですが、そうはいっても「悪霊」や「「白痴」を前にして手をつける勇気がわきません。
キンドル、楽しまれていますか?
まわりの人は「カラマーゾフ」に挫折した人が多く、「よく読み切ったね」と言われますから、人にお勧めすることは難しいのですが、きっと鍵コメさんだったら同じ気持ちを共有できるのではと思います。
ロシア文学は長くてね~トホホ
亀山氏の翻訳は賛否両論があるようですが、おそらく私にとってはこの方の翻訳でなければ読めなかったと思います。注釈がないのも読みやすく、そのかわりに巻末に当時の世俗やストーリについての解説があります。
ロシア文化や歴史は私にとって遠くてね~トホホ
理解できない部分がたくさんありますからこの解説に助けられました。
佃煮が美味しいなと感じながら、この美味しさを味わうのは、私たちの世代で終わりで、果たして若い方々につながるのかしらとちょっと寂しくも思います。すごい保存食だと思います。佃はそのまま地名になるなんて面白いですね。こうした趣のある地名は残してもらいたいですね。
サンクトペテルブルグは美術館が素晴らしいと聞いていたのですが、当時は作られた都であまり魅力がないように描かれているので、つくづくロシアについてはなにも知らないなと思いました。エルミタージュ美術館はエカテリーナ女王が買い集めたマチスの絵がたくさんあるらしく、言ってみたい場所です。映画をご覧になったのですね。わたしもやはりアレクセイの立場で読んでいたようなきがします。親と女性をとりあったり、社会主義の運動はやはり少し遠い存在になってしまいます。人にやさしいアレクセイのような人間にあこがれますね。ところが、アレクセイは自分の意見をあまり言わず、相手のいうことを復唱することが多いとの訳者の指摘があるところも面白いです。使用人の運命もなかなかのものですね。私、こんな読書の感想を話しあいたかった・・・そこを鍵コメddさんがうまく引き取って語ってくださいました。とても嬉しかったです。ありがとうございました。
本当は私も紙の本がいいなと思っているのです。あの場面、あの言葉というのはキンドルではなかなかもどって探せないのです。状況によって読みやすいほうを選択せうのがよいですね。
いろいろご苦労のある中でご自分の力を発揮していらっしゃる鍵コメhaさんにはその前向きの姿勢で励まされています。
私も、今は母のことで手一杯ですが、自分を失わないようにしなければと、いただいたコメントを拝読しながら、自分にいいきかせたのです。人には人それぞれの役割があって、今出来ることを前に向かってすすむのみなのだなと考えています。
ご丁寧にお返事ありがとうございました。