三四郎はそれから門を出た
2017年 08月 19日
表題がしゃれている
本好きな三浦しをんさんはいわゆる活字依存症である。本がなければ広告のチラシでも読むという。
この方を前にして、「私も本が好きで・・・」とか「本って本当に面白い」なんて言葉はぐっと飲みこむ。
この本はしをんさんが読んだ面白い本を独特なくくりで紹介している。
それにしても世の中にたくさん本があるものだ。そのほとんどが作家の名前は知っていても読んだことのないものばかりだ。逆に読んでみようかなと思わせる。
「面白くない本」については黙して語らずとエッセーの中で述べていたから、ここに紹介された本はしをんさんの感性に触れたものばかりである。
例えば「第14回 異質なものの存在を認識せよ」では
「いま私たちが考えるべきこと」橋本治著
「村田エフェンディ滞士録」梨本果歩著
をあげ、以下の文章で書き始めている。
ほんわりと湯気が立っているので、「暖かいお湯なんだな」と思って手をひたしたてみたら、予想外の情熱の温度の高さにしびれた。接した者の魂をゆさぶる、ひそやかかつ激しい情熱が満ちている。今月はそういう2冊を読んだ。
しをんさんの文は理屈っぽくなく感性に訴えてくるので、読んでいいて心地よい。
残念なことに「三四郎はそれから門を出た」は2006年に刊行されている。
したがって、書評にあげられているものは当然2006年以前の作品である。
本を読むときに何年に書かれたものかチェックするくせがついている。
2008年 リーマンショック
2011年 東日本大震災
一般的には2011年の東日本大震災が大きく影響しているとは思うが、私にとっては、経済が水で薄められてゆくようなつらかったリーマンションクが脳裏を離れないのだ。
この2つの時代を経過前か経過後が気になる。
この2つの出来事が私の精神性を支配しているようだ。
どちらにしても本は読む者を幸せにしてくれる、その気持ちには
「そう、そう、そうなのよ」と同志の皆様と手を取り合いたい。
三浦しをん緒 ポプラ文庫