旅芸人、行商人、キーセン、巫女、白丁、鎮魂にたずさわる人々の末裔
細々とその技を残し、今も世の中の片隅に生きる人々を取材した雑誌「根の深い木」に連載された記事36編のうちから
相補版は13篇(内、3篇は続編から),

続編は11編,合計21編が掲載されている。

すなわち21の職種が紹介されているのだが、その多くは被差別の民であり、または大きな収入を得られるわけではない人々である。
そうした底辺の人々が朝鮮の文化を支えてきた。
私は、その誇りに接したくてこの本を手にとり、さらに続編まで手にいれることになった。
韓流ドラマの時代物の中でみる旅芸人、例えば人形芝居や綱渡りのシーンの背景にどのような生活は血のにじむ訓練があったか語られている。
その多くは生きていくためにその道に入る。
またキムチ甕つくり、鎮魂、巫女、白丁はその家に生まれ、そのまま生業とする。
世間から蔑まされたその生活の中に人々の強い姿を見る。
また一時は時代の流れからたくさんのお金を得ても、やがて近代化の波にのれず、置き去りにされる職人も多い。
近代化の波に乗らないことを誇りに思いながらも生活は苦しくなっていく。
いつの時代も安寧に生きることは、たやすいことではない。
紙漉きについての記事の中に私が愛する「全州」が紹介されていた。

訪問したときから韓紙が有名と聞いていたので何枚かインテリア用、あるいはポチ袋を購入してきた。

韓日交流センターにmeiさんには紙で作ったオレンジとブラックのハンカチームもいただいた。

韓紙つくりの伝統が全州にあったのは、まわりの山で良いこうぞが採れたことと
全州川の清らかさにあったという。
川の流れを思い出しながら、ハンカチの手触りを楽しむ。

紙とは思えない良い手触りである。
この本は1994年が初版であるから、技術伝承してきた年老いた人々が今どれほど残っているかしれない。
それでも無形の文化財は語り継がれ、民衆の心へ、
あるいは、民衆の音楽として今も演奏され
形のあるものは、残され、私たちがそのものが放つ感触に接することができる。
こうして生きてきた人々の誇りに国を超えて敬意を表したい。
増補 アリラン峠の旅人達 朝鮮民衆の世界
続アリラン峠の旅人達 朝鮮職人の世界
安宇植編訳 平凡社