ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅

わたしは今65歳である。

50代では考えなかったこと、60歳になっても考えなかったことを最近考えるようになった。わたしの世代では、人生の結果はまだ出ていなくても半世紀にわたる自分が歩いてきた結果はある意味明白に目の前につきつけられるのだ。
あまり過去をふりかえるのが好きではなく、いやこれまでのことが恥ずかしいからあえて過去のことを振る変えることを避け、今を生きようと考えるのかもしれない。
そして、未来のことを、これからどう生きていくかを無意識に考えているというわけだ。
これからなにをしたいということになれば、両手にあまるものやりたいことがある。
そうではなくて、どう生きるかが問題なのだ。

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この本の主人公ハロルドも65歳である。読んでいみたいと思った理由は主人公の年齢が私と同じからだ。
イングランド南西部の町 kingsbridgeに妻と二人で住んでいる。
ある日20年前の同僚クウィニーから「癌で最北東部の Berwick-upon-Tweedのホスピスにいるという手紙を受け取る。
返事を出そうと家を出てポストに向かうその足でクウィニーに直接会って「ありがとう」を言いたくて1000キロ先のBerwick-upon-Tweedに歩き続けることになった。
歩いて会いに行けまたどりつくまで生きて待っていてくれると信じて。
ハロルドには「ありがとう」と言いたい理由があったのだ。それは道中で少しずつ明かされる。

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旅の途中で、妻や息子のことを考える。
旅で出あう人々とのやりとりを考える。
時には旅に参加する人や犬がいて、マスコミにも取り上げられる。
作者は旅の中でハロルドの人生を語ってゆく。

ちょっとだけ掛け違ったボタンが、大きな亀裂となって、ハロルドの人生を考えていたものと違うものにしてしまった。
そして家に残った妻もちょっとだけアイロンの線がずれてしまって、、寂しい人生になってしまったことを考えるようになった。
そして、離ればなれに時を過ごすことによって擦れ違いは誰のせいでもなく、自分の責任だと考えるようになる。ハロルドと妻は次第に透明になっていくように感じた。
これまでのこびりついた垢のようなかたくなな気持ちがはがれおち、透明な無垢な人間にもどっていくのだ。
だからこそ、この旅はその道行過程こそが意味あるものとする巡礼なのだ。

ホスピスについてからのことをここに書くのは控えよう。それはさして重要ではない。
読者として巡礼の旅に寄り添って、、今自分の人生の垢がなんであるのか、そして透明な人間になれるのかを考えることのほうが重要な課題であるような気がするからだ。


ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅
レイチェル・ジョイス著 亀井よし子翻訳
講談社
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by shinn-lily | 2016-04-12 21:26 | | Trackback

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