普通に生きるということ

鷺沢萌の作品を「ケナリも花、サクラも花」「私の話」に続いて3冊読んだ。

b0116765_2332537.jpg


「帰れぬ人びと」文春文庫
「駆ける少年」文春文庫
「君はこの国を好きか」新潮文庫

19歳で文学界新人賞をもらった「帰れぬ人びと」の中に掲載されている「川べりの道」は高校3年生少女がこんな風に世の中を見ることができるのだろうかという驚きをもって読んだ。
右往左往して、表面だけを見て暮らしていた自分の学生時代を思い出すのも恥ずかしい。

鷺澤の作品に大きな影響を与えた出来事は、2つあると読み取れる。
まず父親の会社の倒産だ。
コウキ出版という教育関係の教材を出版している会社が、学習塾の分野に手を広げようとして人にだまされてつまずいた。その結果田園調布の豪邸を夜逃げのようにして出なければならなかった。高校入学前である。
そしてもうひとつは、作家になって小説のために父のことを調べているうちに、自分の中に1/4の日本以外の血が混ざっていることを初めて知ることになったことだ。
若い時から普通でない人に注いでいた視点はここから生まれ、さらに大きく広がった。

普通に暮らしているように見える人が多い世の中で、普通ではない漬物石のような大きな石をかかえて生きている人間がいる。なるべくめだたないように片隅で生きようとしている人がいる。鷺沢の作品には必ずそういう人物が登場する。
それは鷺沢の中にある自分をきり刻んでひとりひとりに投影しているようにも見える。

「普通」ってなんだろうと、私はふたたび自問する。
鷺澤の作品を読み終えると、ふと無意識に自分の生き方を考えていることに気づく。
「普通」なんてある日突然壊れてしまうようなもろいものである。
「普通」が壊れてしまった後にいろいろな形で生きていく人々をたくさん書き残した。
それなのに鷺沢は結局自分の人生を作品の中に残すと、生きることを拒否して、命をたつ。
普通でないことに耐えきれなくなったのだろうか?
私にとって大きな余韻の残る作品群であった。
トラックバックURL : https://shinnlily.exblog.jp/tb/25629269
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by shinn-lily | 2016-04-06 00:04 | | Trackback

毎日1つ幸せみつけ    


by shinn-lily
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31