震災を忘れない 仙台、宮城の旅(3)  本物を求めて

「旬は遠くになりにけり」という記事にいただいたコメントの中で示唆にとんだご意見をいただいた。

フランス在住のkanafrさんから、「何がよいものかを考える時間もなく次々に新しいものをおいかけて旬をしかけていく日本の環境では本物がじっくりと育ちにくい」と。

イタリア在住のihokoちゃんからは「日本人の素人好きが本物を肩身の狭いところにおいやって、本物が育ちにくい」と

(お二人りへ・・・勝手に記事につかわせていただいて、リンクを張らせていただきましたがご了解ください。)

お二人とも日本を外側から見ていらっしゃりながら日本の心を大切にしていらっしゃる方々だ。
そしてこのご意見はどちらも、今の日本の現状をするどく指摘されていると思う。

柳田國男氏は「草木と海と」(「雪国の春」角川文庫に収録)の中でこんなことを言っている。

「名所崇拝」
名所は旅人にとって実は無用の拘束である。自分の目で美しいものをみなさい。

「紀行文学の弊」
風景は気候、天候などによってその形をかえるものだ。紀行文は狭い主観の独断的記述である。天然の美しさを学ぼうとするものには無用の誘惑である。

「松が多すぎる」
どこの海岸も松が植えられている。旅人は白砂青松という類いの先入観を離れて、自在に海の美を説いて朗詠古今の昔に始まっているマンネリズムの穴から飛び出さなければならないと説く。

いくつかの花や鳥や樹の考察を説いた後 締めの章を原文のまま載せてみる。
「風景を栽える」
自分はわずかに残存する前代の天然をなつかしむあまりに、やや不当に人間の改革を軽視したかもしれぬが、要するに日本人の考え方を、一種の明治式に統一せんとするが非なるごとく、海山の景色を型にはめて、片よった鑑賞を強いるのはよろしくない、何でもこれは自由なる感動に放任して、心に適し時代に相応したた新たなうつくしさを発見せしむるに限ると思う。島こそ小さいが日本の天然は、色彩豊かにして最も変化に富んでいう、狭隘(きょうあい)な都会人の芸術感をもって指導しようとすれば、その結果は選に漏れたる地方の生活を無聊(ぶりょう)にするのみならず、かねては不必要にわれわれの祖先の、国土を愛した心持を不明ならしめる。いわゆる雅俗の弁のごときは、いわば同法を離間する悪戯であった。
意味のない因習や法則を捨てたら、今はまだ海山の隠れたうつくしさが、よみがえりうる望みがある。以下省略


本物が育ちにくい日本、
Kanafrさんとihokoちゃんのご意見に加えて柳田國男氏が言う「意図する型にはめられた美くしさを求め、本当の美しさ面白さを見つけられなない狭隘な感覚」も邪魔しているかもしれない。
みんなと同じでいればほっとする日本人の体質も、一時のブームは支えても、継続した本物の支えとはならないのだろう。
もちろん、古来より災害の多い島国ゆえのあきらめの気持ち、新しいものを求める気持ちでこれまでやってきたという背景はあなどれない。
新しいものを求める心を否定する気持ちはない。ただ鍛え質の高い志を育てていかなければならない。

仙台の旅は時間が限られている。
特に日本三景だからといって松島をわざわざ見に行くこともあるまいとは思っていたのだが、
昨年ボランティアで東北に行った人の勧めで、50年ぶりに訪ねてみた。
ということで狭隘(きょうあい)な都会人の芸術感が賞賛する名所をちょっとだけ覗いてほしい。

仙石線松島海岸駅ホームからはするに海と島々がみえる
赤いバスは石巻方面への代行バス。
本当は石巻まで行くべきだあると考えたが、今回ホテルのミッションを第一優先の旅とし、また機会をみつけたい。
あるいは岩手の宮古や小本まで、かつて小学生の娘と歩いたところにはいいつか訪ねたいと思っている。
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伊達藩の威光がいまも残るこの地域
円通院
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瑞巌寺は修復中だ。
博物館の中で背中に視線を感じ、振り向いたら大きな円空仏であった時の嬉しさを忘れない。
入り口の前の木立の中にこの看板。しかし本堂まではかなり距離があり、この地は数ある島に救われた。
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五大堂 潮風に洗われた木肌の色に気持ちが落ち着く
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この海を見た時、誰がなんと言っても、来てよかったと心から思った
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凡人であるから、いたく感動して帰ってきて、
そして、ひとりでも多くの人に東北応援もかねて訪ねて欲しいと思っている。

名所も捨てなものじゃないのですが・・・柳田先生!
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Commented by kimanba at 2013-03-18 08:20
>背中に視線を感じ、振り向いたら大きな円空仏であった時の嬉しさを忘れない。
とか
>潮風に洗われた木肌の色に気持ちが落ち着く
とか
lilyさんの旅は
ドドォ~ンと豪快なPC画面いっぱいのきれいな画像と添えられた何気ない文章
そして
普通の人が通り過ぎてしまうようなトコロに目を当てた
そんな視点からのさまざまな想いを読む事が・・私は楽しいです♪

その意味では今回は画像が少し大人しい(?)、、って偉そうにゴメンナサイですね 笑
Commented by sola-1-sola at 2013-03-18 09:47
震災で悲しく人が変わってしまったことも多く耳にします。

旅の冒頭にでてきた伊集院氏の奥様の篠ひろ子さんは
毛布、食糧、水、、、震災に備えた備蓄を無償で提供されたそうです
なのに、伊集院氏は『日本人としての誇り』を失っては行けないと警鐘をならし続けていました。
そこには被災地での具体的な何かがあったのだろうと想像されます。
震災とそれにともなった災害に事故多くのことが一遍に押し寄せてきたあの地震。
己がむき出しにならざるを得なかったと思います。

lilyさんのレポートで思い出した話がありました。
いわきのスパリゾートハワイアンズでの地震のあとの対応は
むき出しになった本当のサービスの話でした。

決して、いやな話だけじゃなく、いい話だけでなく、
その地と人に触れなければ行けないと思いました。

lilyさんとウェスティンホテルの素敵な試みに感謝〜☆





Commented by whitelacenonyo at 2013-03-18 22:29
ウェ〜〜ン(涙)先ほど、書いたコメントが消えている!
エキサイトさん,しっかりしてって言いたいわ。
でもいい(笑)もう一度挑戦よ。だって唸る程、仙台 宮城の旅、含蓄があるんですもの。

名所崇拝は無用の拘束とはよくぞ言ってくれました柳田國男先生。
観光は余り好きではない私ですから。
名所巡りをするんであれば京都,奈良は数年住む?、、、

でもね、
>この海を見た時、誰がなんと言っても、来てよかったと心から思った。
私がlilyさんのファンなのはこういった感動を素直に表すことなのです。
歳を重ねると感動することが少なくなってしらける人が多いから。
感動をしたいから名所も捨てたものじゃないですね。lilyさん。
Commented by shinn-lily at 2013-03-18 22:54
kimanbaさん こんばんは

>今回は画像が少し大人しい
kimanabaさん、するどいです。
私もそう思っていました。
ひとつには、ホテルのHPにご迷惑をかけないよう画像が無意識に気になっていたこともあります。
そして、写真を見て感じたことは、冬の東北の光は弱いということです。
雪が大地を覆っていれば、反射で光をとらえることができるのです。
ここのところ暖かくくなるとあきらかに冬の光の強さと違うことがわかります。
本当の意味で東北の光が強くなる日々まで、わたしたちは東北に心を寄せていかなければならないと思いました。

いつも写真をちゃんと見てくださっていることに、感激
kimanbaさんに感謝しています。
おお、手抜きはできませんね。
Commented by shinn-lily at 2013-03-18 23:01
Solaさん ふたたびありがとうごじます。

伊集院さんが仙台で地震をどううけとめられたかは
大人の流儀の3によく書かれていますね。
住んでいて実際に体験なさった方々の話は伝えていかなければなりません。
今回は見ず知らずの地元の方とお話をしましたが、(たぶんひとり旅なのでみなさんが話しかけてくださいました)どの方も結局地震の話になりました。
仙台はそれほど地震の後はみえずに復興されていましたが
人々の心の中にはまだまだ、わたしたちのはかり知りえない想いが残っているような気がしました。
直接お話しが出来てよかったとも思っています。
Commented by shinn-lily at 2013-03-18 23:09
whiteさん こんばんは

whiteさんを泣かせるなんて、
エキサイトくらいなものでしょう。
わたしも経験があります、、、もうまったくという感じですね。

whiteさんは観光はお嫌いなのですか。
そういえばパリは暮らすように滞在する旅ですものね。
わたしも、時間がとれるようになったら、パリとはいいませんが、そんな体験をしてみたいと思います。

柳田國男がこんな風に言っていたのは面白いとおもいました。
どの時代にも、考えることはあまり変わっていない、
当時から今危惧されているようなことを言う人がいたわけですね。

私は観光という言葉は好きではないのですが、見てまわる旅は大好きです。
国内の場合、日本人とはなにか、その中での自分はどんなところに位置するのか、そんなことを考えながら・・・ですからひとり旅が良いですね。
感動って理屈抜きなのですよね。
血が頭から足までさーっと流れる、そんな感じです。
だから、また旅に出たくなる、
ただし身近では私にとって、本の中の世界も旅のひとつです。
Commented by ihoko at 2013-03-19 16:10 x
私ね。大昔ですが、イタリアで最初、語学習得の為に、ペルージャというところで学生をしていた頃、余りにも星空が綺麗で、涙が出そうになった事があったんです。で・・その時に、夜空を眺めて涙が出るなんて・・そんな事。この年になってもあるんだ。と、自分で自分に驚いた覚えがあるんですよ(今から思ったら、あの頃は、まだ青タンの残る、クリスマスケーキ年齢でしたけどね)
旅は時々、感動するという事を呼び起こし思い出させてくれますよね。私も、Whiteさんと同じく、名所と言われる場所が好きではないです。ここが美味しいと人が教えてくれて、行列ができているようなお店での食事も苦手です。どこに行っても、観光客など誰もいない公園でぼ~~としているのが好きで、ロンドンやパリも 名所は殆ど知らないんですよ。フィレンツェですら同じこと。私 通りの名も、お店も何も知らない。私なら、Lilyさんも、思わず涙がこぼれた東北駅での光景、こういうのが一番、後々まで残る思い出になりそう。
多分、いつか東北に行ける機会があったとしても、私、ベンチに座って、ぼ~~と、歩く人を見ているような気がします。
Commented at 2013-03-20 10:44
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by shinn-lily at 2013-03-21 08:35
ihokoちゃん おはようございます

わたしの場合、ずーっと「君作」でありました。
で、その意味がわからず何年もすごし、「名作」であることがわかったのは1年前、あの安っぽい生地と醤油の濃い味、嫌いではありませんね。
現在は100均のご常連おせんべいです・・・と先日話忘れ。

そうそう、わたしの旅のいくつかある夢は
チェントロで、カフェがあればいいけれどなければどこかに座り込んで1日行き交う人を見ていたいというのもあります。
日本は広場はあまりなく、せいぜい駅前広場と最近では都心が開発されると、そんなところをつくりますが、まだまだ根付いていません。
旅はこれと決めない、名所であっても良いところはみたい
人があまりいなければ、一番良いですが、でも心配なのは
東北の観光を生業としているところでは大きな打撃を受けていることです。
実際季節も悪かったこともありますが、松島の観光船に乗っている人はほとんどいなくて、たいへんだろうなと先のことを考えてしまいます。

Commented by shinn-lily at 2013-03-21 08:35
ihokoちゃん 続きです

柳田國男のような旅やら、先人の旅のかかわりを見るのも面白いですが、
結局は自分流の旅、その時その時に出来るやり方になるのだと思います。歴史をみながらその場に立って、昔の人の生き方に想いを馳せる、
今のところはそんな旅が好きです。結局人間とは?といった感じ。

たくさん時間が出来たら、そんなに旅に出たくない、今はなかなかいけないから、行きたくてしょうがない、そんなものだろうなとも思っています。
Commented by shinn-lily at 2013-03-21 21:26
鍵こめさま こんばんは

鍵こめ様が本物を目指していることは、記事を見せていただいて、感じておりました。
お仕事にしてもお野菜にしても、簡単に本物が手に入るというものではなく、そこには情熱や信念や努力や・・・いろいろなものがハーモニーのようにうまく響きあったときに初めて出来上がるものなのでしょう。
その目標にたどりつくのにたとえ道のりが遠いとしても
そこをめざしているという誇りは持ち続けていなければなりませんね。
きっとその誇りが弱った気持ちを後押ししてくれると思うからなのですが。

友人ともいつも話すのですが、若い時もっと勉強しておけばよかったと・・・でもたとえ戻ることが出来たとしてもきっとまた同じことなのだろうと。だから、過去を悔やむのではなく未来を想い悩むことなく今を生きることが最善だろうと・・・ですから、今勉強をしている若者には今をきっちり生きて欲しいとエールを贈りたいです。

鍵こめ様にいただいたコメントにしっかりと向き合いたいと思い、レスが遅くなってごめんなさい。
Commented at 2013-04-07 00:32
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by shinn-lily at 2013-04-09 07:11
鍵コメさま おはようございます

小本、やっぱりそうですか。
小本はその土地の民舞、七頭舞を習いに行った子供の付添でした。
練習場の小本小学校まで水が着たようです。海岸で雲丹を味あわせてくださった、その方の写真が残っていて、どうなさったか、とても気になっています。
泊まった民宿はたぶん流された場所だと思います。
皆様の優しいかった気持ちが残って小本に今でもひっぱられて、いつかとは思っています。
だからお嬢様のお気持ちがわかるような気がいたします。
本当に忘れてはいけない、目をむけていなければいけません。
それしか、今はできませんけれど、鍵こめさまと同じ気持ちです。

ジャーナリストの件も・・・今回の震災のことだけでなく、政治経済に関しても、なにが本当か、本当のことを求めて、真摯な気持ちで使命感を持ったジャーナリスト・・・そうなることは、とても困難な道なのでしょうけれど、それがジャーナリストというものですよね。
フレーミングされたテレビ報道には疑いながら見るくせがついてしまいました。

つらくても、小本の生の情報を有難うございました。
facebookでお元気な様子だけ確認させていただいてます。
by shinn-lily | 2013-03-17 23:42 | 日本をめぐる | Trackback | Comments(13)

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