モノトーンの八重山諸島をめぐる⑥ここが故郷の君たちへ
2017年 11月 26日
行きつけの美容院では沖縄の若者がかつて5,6人働いていた。
女性はみな美人で可愛らしく、お店の中が華やいでいた。
ひとり石垣出身の男性がいて、シャンプーをよくやってもらっていた。
とても気を使い、体格の良い青年ではあったが、いまひとつ自信なさげな所作が心配であった。
三線の名手だと聞いていたので、「機会があったら聴かせてね」と頼んでいた。
しかし彼は体調をくずし、休みがちとなっていた。どうやら心を病んでしまったようだ。
いつも顔をあわせれば愛くるしく挨拶にきてくれていたのに。
その後石垣にもどって漁師になって、元気に暮らしていると聞いた。
そしてその他の沖縄の女性たちもみんなやめて故郷にもどってしっまたらしい。
美容学校に行って勉強し、就職してからはお客に気を使い、夜遅くまで先輩の指導を受けて頑張っていたのに。
でも、こんな美しい場所で生まれ育ち、まわりみんなが家族同様の知り合いで、お金に執着しなくてもなんとか暮らせてしまうこんな故郷をもっていたら、
町中のごみごみした場所で、人間関係に悩み、将来を悩み、孤独を悩みながら暮らす必要はない・・・
この島のどこかで暮らしているあの若者たちにむかって、私は心の中で大声で叫んだ。
「みんな沖縄にもどって良かったね」
雨ばかりのモノトーンの八重山諸島の旅は、願っていた観光旅行にはならなかったが心の片隅に決して小さくはない想いが残る旅であった。